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2014-07-19(Sat)

精霊会

陽炎はどうやってつかまえる

さあ

陽炎の寝床を知っているか

さあ

ほらそこのガス台に居るさ

目をやったのは奥の部屋の卓上コンロだった

確かになにも掛けずつまみを捻りマッチを擦れば真うえの空気は揺れる

カセットコンロの上にあおく暗いほのお達が環状に整列して立っている

中へ招き卓袱台を挟んで向かい合いに座った

陽炎ごしに曲がった口は動く

お供えの花を持ってきた


真夏に背広を羽織り、更にコンロを焚いたせいで朦朧としたのだろう
火をかすめて差し出された

花束のなかのほおずきへ燃え移り焼け剥がれた破片は小さな火で身を焦がしながら古臭い印刷機にも毀れ落ち、この先なにかが刷られることはなかっただろう紙の上を目指して着地した
黒く縁取られた穴がひろがって、やがて穴は紙よりも大きくなった

危うく火事になりかけたのに揃って見更けてしまっていた

向かえのアパートの窓が如何なる想像力も持たないまま太陽の光を返していた



おかしなことは起こるときには起こる

変わり者の訪問客が引き取り数時間が経ったのち
夢から覚めるようにして夢を見始めた

食品加工工場だろう

ラインに作業員は居ない

そうではない、一人居る事になる
まだ誰も足を踏み入れない新雪のような上下の作業着を着ていた

他は見馴れない加工肉たちが行儀のいい渋滞のようにコンベアーを流れてゆくだけだ

人を探し思うがままにまかせて
場内をうろつくとある部屋へ漂着した

複数の業務用冷蔵庫が四方の壁を埋めている
開いて覗くと、冷気が溢れる

冷蔵ではなく冷凍であった

中には箱のようなものが伺えたので引き摺り出してみる

棺桶の様な大きさの氷製器だ

仕切りが氷を幾つかに分けている

迂闊だった、手の皮が貼り付いて取れない

だけれども、そんなことより

左の列の4番目の氷のなかに何か動いて見えた

顔を近づけると、場の斥力みたいなもので何処かへと放り出された

結局、何だったのか確認でず終い

体を起こして此処は何処なのかを確かめる

渡り廊下だ

頭上に真一文字の蛍光灯が一筋になって
終わりがないと思えるほど奥先へと伸びている

両側の窓の下には「消火栓」と記してある箱が隙間なく隣り合って、その列に挟まれながらしばし進んで行く
ほどなくすると、なかに他の箱と何一つ変わるところはないのに、どうしても目と気を引いて止まないものを見つけた
と言うより、こちらがそれに見つけられてしまった、の方が何故かしっくり来る。
ためらわず開けると、義眼、義鼻、義唇、義歯、義手、義足らが、生まれる前の姿で小さな無菌室にうずくまっていた

義眼が傾いて黒目がこちらを向いてるように見えた
偶然だと思っていたら
義唇が力なく閉じたり開いたり

声なき訴えを目の当たりにすると

今度は、意識が遠退くように目覚めた

食品工場に勤めていたのは父だ

父は祖父に甚だ厳しくされて育った

反動のように孫に甘かったが

所謂、亭主関白で祖母にも庇ってもらえることもなかったようだ

祖母が呆けて介護施設に入り留守になると
父は老いさらばえた祖父を何かの度に怒鳴りつけていた

怒鳴り声のなかで弱っていって力尽き、最期を迎えたように見えた

父は復讐を果たしたのだろうか

そして祖父の死の数年後に自死を選んでしまった

反抗期の延長のように思われるのは心外なので誰にも言い漏らさずに来たが
父のすることには虚しさがつきまとっている印象があった

幼年に離婚した母も同じモノを読み取って去って行ったのかも知れない

復讐しようとしている彼の声のなかには、まざまざと虚無の肩を叩きなから、言葉にすると陳腐化してしまうぬめりを帯びた部分があった

日中に寝てしまったのだからその夜は当然寝付きが悪かったが布団のなかで粘って何とかうとうととしだした

さっきの夢にでてきた氷だ

もう一度氷のなかを覗くのを試みた

赤黒くて形の定まらない肉のようなものがあった

表面に女の顔が一瞬押し出されたけど、すぐに埋没していってしまった

うしろで地べたと摩れる音をたてながら蠕動しているなにかがいる

白暈けたビニールにくるまれた人だ

体は女性なのに付いてる頭は父のだ

真っ青な粉薬がまぶしてあるかのような肌をして、ビニール越しになんとか息をしようとしているのが分かる
「あの頃」を穿つほど睨みながら

以後、目まぐるしくイメージが混雑しだす

口角から縫い糸を垂らした痴呆の祖母

指環の石から生えてきているなま爪

ナイロンの焦げたにおい

いつの間にか火葬炉の前に突っ立っていた

角膜を摘ままれたように眼前の光景が捩れる

全身を巨大な手で握りこまれた

今にも沈みきってしまいそうな


頬がかぶれる程の尋常ではない量の涙で起きた

涙なんて流したのは身内が死ぬずっと前だ

しかし夢のことはあれやこれやと考えるような真似は早々によして、こんな時季なのだから仕方がないとケリをつけた
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